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2017-02-24

魚の「煮付け」と「あら炊き」を同じように煮てはいけません

お魚料理は苦手だなぁ~という声をよく耳にします。
下処理の手間、臭い、味が決まらない・・・など、ハードルを高くする理由はいくつか考えられますが、手を抜いてはいけないポイントさえ押さえれば、難しい料理ではありません。

今回はお魚料理の中でも定番和食の煮魚、その煮方に焦点をあてて書いてみます。

先日、私は晩ご飯に鯛のあら炊きを作りました。
(ここで言うあら炊きと言う表現はどちらかというと関西風の言い方です。「煮」と言う方がしっくりくる方はあら煮でも構いません。)
「あら」というのは、魚を捌いた際に残る頭、カマ、背骨などとその周りについた身の部分のことを言います。

そこでちょと考えて頂きたいのですが、あらを炊くのと、魚の煮付け、「煮る」ことは同じで、魚の使われている部位が違うだけなのでしょうか?

実は、「魚の煮付け」と「あら炊き」は同じ煮魚ですが調理の方法は別物です。
その違いには、それぞれをどんな味わいで、どんな風に食べてもらいたいのかという意図が潜んでいるのです。

 

まず、「魚の煮付け」からご説明します。

魚の煮付けを作るときは、煮汁を軽く沸騰するくらい温めてから魚を入れて煮ていきます。
煮ている間は落としぶたをし、煮汁が鍋の中でしっかり回るようにし、味を全体に行き渡らせます。
煮上がりは、箸で身をほぐすとホロリとある程度かたまりになって取れ、表面は煮汁の色がしっかりついていますが、身の中は白い状態です。

そう、煮付けは身の中までしっかり味を染みこませるのではなく、表面に味がつけば良いのです。
ですから、お皿に盛り付けるときは、必ず煮汁も浸るくらい入れて、食べる人がほぐした身を煮汁にチョンチョンとつけながら食べられるように配慮します。
そうすることで、中まで味が入っていなくても美味しく頂くことができるのです。

 

続いて、「あら炊き」です。

あら炊きは、まず鍋にあらを並べ、冷たい状態で水、酒を入れ、そこから火を点けます。
つまり、冷たい状態からゆっくり温めながら煮ていきます
あらには腹や背の身の部分よりも魚のくせが多く残っており、そこが良い部分でも悪い部分でもあります。
悪く出ればそれが臭みとなって残り、良く出ればそれが旨味となって残ります。

酒と水が冷たい状態から煮るのは、アルコールが沸騰していく過程で一緒に魚の臭みを飛ばし、骨などから出る旨味を煮汁の中にしっかり抽出するためです。
そして、魚の目が白くなるまで煮たら、そこで甘み(みりん、砂糖など)、醤油を入れてさらに煮ていきます。

落としぶたをして、時間をかけて煮汁が少なくなって艶が出るまで根気よく、時々煮汁を回しかけながら煮ます。
これは、一度煮汁に溶け出した旨味を再び魚に戻していく作業でもあります。

煮付けと違って、あら炊きはほとんど煮汁が残らない状態まで煮詰めていきます。
その分、身の中までしっかり味が染みこんだ状態になります。

 

煮付けに適している魚は、比較的くせが少ない淡泊なお魚。
身が柔らかいお魚で、形が崩れないようにさっと煮るのに適した調理法です。

あら炊きのような調理法は、比較的くせの強いお魚やこってりと仕上げたいときに利用すると良いと思います。

そういった細かいところ、レシピではなかなか表現できないところは、これから教室で直接お伝えして行きたいところでもあります。
下処理済みの魚や切り身を買ってきて調理するにしても、おうちで一手間加えるだけでお魚がグンと美味しくなるコツがいろいろとあります。

私は、家庭料理の範囲で一から魚を捌く必要はないと思っています。
家庭料理は、限られた時間の中で、いかに手早く美味しくできるかということも大切な要素です。
魚を捌くのにはそれなりの包丁も必要、技術も必要、あちこち臭くなったり汚れたりもしますし、生臭いゴミも出ます。

だから、お魚屋さんにある程度下処理をお願いして買って帰るのでも十分だと思うのです。

ですが、ときどき、本当にときどきで良いので、余裕があるときに、鱗も内臓もそのままのお魚の調理にチャレンジするというのも、個人的にはおすすめです。
お家で食べるのだから、少々下手でも構いません。

例えばお肉だったら、ほとんどの場合が切り身になった状態で売られ、元の姿が想像しにくいですよね。
お野菜はそのままの姿で買うことも多いですが、目や口がある動物ではありませんから、自分とは全く別物として扱うことが多いと思います。
魚は、家庭で扱える食材の中でも唯一と言って良いほど、そのままの生きて動いていた姿を想像させてくれます。海を泳いでいた、そのままの姿の魚です。

それは、料理をするということが、命を扱っているのだと言うことを見せつけてくれるものではないかと思うのです。

私もときどき、魚を捌くことに挑戦しています。
頭を落とし、お腹を裂き、内臓を出します。
そこには生きて動いていた痕跡がしっかりと残っています。
その作業を通して、料理は命を扱っていること、私たちはいつだって命を頂き、それを循環させながら生きていることを心に思い起こさせます。

特別なことをしなくても、ただ台所に並べられた食材と真摯に向き合うだけで良いのです。
野菜もお米も、お肉もお魚も、誰かの労力を介して、大地や海に繋がっているのです。
ということは、それを食して生きている私たちも、大地や海へ繋がっているのでしょうね。

もし子どもさんと一緒に暮らしている方であれば、是非一緒にお魚を扱ってみてください。
それは、どんな栄養学を語るよりもすばらしい食育になるのではないかと思います。

 

話がそれてしまいましたが、まとめますと・・・

●魚の煮付けは温めた煮汁から煮始める
●煮付けは表面に煮汁の色がつき中が白い状態で出来上がり
●あら炊きは冷たい酒と水から煮始め、途中で調味する
●あら炊きは煮汁の水分を飛ばして旨味を閉じ込め煮詰めて艶を出す

お魚の基本的な下処理についても、いつか書いてみたいと思います。

それではお魚料理、ぜひ楽しんでみてください!

 

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